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不動産投資の税金対策の仕組み:赤字100万円で減る税を税率7段階で計算

不動産投資の税金対策の仕組み:赤字100万円で減る税を税率7段階で計算
2026-10-20 公開・2026-10-21 更新

この記事の要点

  • 不動産投資の税金対策の仕組みは、減価償却費などで不動産所得を赤字にし、その赤字を給与など他の所得と損益通算して、所得税と住民税を減らすことです。
  • 赤字100万円で減る税は、所得税の税率5%の段階で15万1,050円、45%の段階で55万9,450円です。売った年の1月1日の時点で、持っている期間が5年を超えていれば、同じ100万円に20万3,150円の税がかかります(国税庁 No.2260・No.3208、総務省「個人住民税」から計算。令和8年分までの税率)。
  • 公式の税率で税率7段階を並べると、5%と10%の2段階では、赤字100万円で減る税(15万1,050円・20万2,100円)より、売った年の1月1日の時点で持っている期間が5年を超えて売るときに同じ100万円にかかる税(20万3,150円、令和8年分までの税率)のほうが大きくなります。持っている間に税が減っても、売るときの税のほうが大きくなる段階があるのは、調べて分かった意外な点です。
  • 土地を買うための借入金の利息から生じた赤字は、損益通算できません。国外中古建物を簡便法などで償却した分の赤字も、令和3年分から対象外です。
この記事の目次(10)
  1. 結論:赤字を他の所得と相殺するから税が減り、多くは売るときまで先送りになる
  2. 不動産所得・減価償却・損益通算・譲渡所得の仕組み
  3. データで見る税率の段階と賃貸住宅の数
  4. 研究で分かっていること:所得区分の転換と、赤字の物件を持つ動機
  5. 計算表:赤字100万円で減る税と、売るときの税(税率7段階)
  6. 土地の分の利息の制限を、よくある例の形で計算する
  7. 「短い年数で償却する」話の流れと、今のルール
  8. よくある質問
  9. 次に読む
  10. 出典

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結論:赤字を他の所得と相殺するから税が減り、多くは売るときまで先送りになる

不動産所得の赤字は、給与など他の所得から差し引けます。赤字100万円で減る税は、所得税の税率の段階によって15万1,050円から55万9,450円まで差があります(国税庁 No.2260・総務省「個人住民税」から計算)。

売った年の1月1日の時点で、持っている期間が5年を超えていれば、同じ100万円には20万3,150円の税がかかります(国税庁 No.3208から計算)。所得税の税率が5%と10%の段階では、売るときの税のほうが大きくなります。

国税庁 タックスアンサー No.2260 所得税の税率の「計算方法・計算式」の切り抜き。1,000円 から 1,949,000円の5の所を赤い枠で囲んでいます。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.2260 所得税の税率(2026-10-21 撮影)

どの赤字でも相殺できるわけではありません。土地を買うための借入金の利息に当たる赤字(租税特別措置法41条の4)と、国外中古建物を簡便法などで償却した分の赤字(同41条の4の3)は、損益通算の対象外です。

不動産所得・減価償却・損益通算・譲渡所得の仕組み

不動産所得は、家賃などの収入から経費を引いた所得です。式は「総収入金額 − 必要経費 = 不動産所得の金額」です。必要経費の例として、固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費が挙げられています。

減価償却費は、建物などの取得に要した金額を、使える期間(法定耐用年数)にわたって分けて、各年の必要経費にするものです。現金は出ていきませんが、経費になるので、帳簿の上では赤字になることがあります。

損益通算は、ある所得の赤字を、ほかの所得の黒字から差し引くことです。国税庁は「不動産所得の損失(赤字)の金額があるときは、他の黒字の所得金額から差し引くことができます」と説明しています。法律の根拠は所得税法69条です。

不動産所得の計算から損益通算を経て、売るときに譲渡所得の税がかかるまでの5段階の流れ。
不動産所得の税の流れ

譲渡所得は、物件を売って得た所得です。減価償却費を計上した分だけ建物の取得費が減るので、売るときの譲渡所得はその分増えます。つまり、持っている間に減った税の一部は、売るときの税に移ります。

税率は、所得の種類によって違います。給与などと合わせて計算する総合課税の所得税は5%から45%の7段階です。住民税の所得割は10%です。

論文に出てくる「最高税率55%」は、所得税45%と住民税10%を足した数字です。5年を超えて持った不動産を売るときの税は、所得税15%と住民税5%で、合わせて20%です。このほか、令和8年分までは所得税額の2.1%の復興特別所得税がかかります。

データで見る税率の段階と賃貸住宅の数

所得税の税率は、5%・10%・20%・23%・33%・40%・45%の7段階です。どの段階に当たるかで、同じ赤字でも減る税が変わります。

住宅の統計では、2023年の空き家は900万2千戸で過去最多、空き家率は13.8%で過去最高です。このうち賃貸用の空き家は4,436千戸で、空き家の総数の49.3%です。共同住宅に限ると、空き家のうち賃貸用が78.5%(394万7千戸)を占めます。

49.3%と78.5%は、空き家の数の中で賃貸用が占める比率です。物件ごとの空室率ではありません。

新しく建つ貸家は減っています。令和7年度の貸家の着工は308,906戸で、前年度より13.5%減りました。地域別では、首都圏が4.5%減、その他の地域が23.6%減です。

2023年の空き家数と空き家率、賃貸用の空き家数、令和7年度の貸家の着工戸数を並べた図。
空き家と貸家の数

研究で分かっていること:所得区分の転換と、赤字の物件を持つ動機

広瀬(税務大学校論叢 第108号)は、日本の所得税と米国・英国・ドイツ・フランスの制度を比べた研究報告です。短い期間で償却して不動産所得に「計算上の損失」を出し、高額な給与所得など(最高税率55%)と損益通算します。そのうえで5年以上使ってから売り、長期譲渡所得(分離課税で20%)にする手法を、「所得区分を転換する」ものだと指摘しています。

この報告は、制度を改正しても「また類似のスキームが開発される」状況だと述べています。ただし、制度と法令を分析したもので、件数や金額は測っていません。税務大学校の研究部教育官による研究報告です。

上田(税務大学校論叢 第96号)は、会計検査院が平成27年度決算検査報告で指摘した、国外の中古建物を使う仕組みを分析した研究報告です。会計検査院の所見を引き、総合課税の所得(最高税率55%)が分離課税の所得(税率20%)に変わる点を説明しています。そのうえで、この手法を「節税と租税回避の境界付近の事例」としています。この報告は令和元年6月のもので、国外中古建物の損益通算を制限した租税特別措置法41条の4の3(令和3年分から)ができる前の分析です。

Bangura・Lee(2024年)が、オーストラリアのシドニー都市圏の住宅投資家を1991〜2018年について調べた研究があります。その研究では、低い利回りを受け入れる投資家と、賃貸の赤字を給与と相殺できる制度(negative gearing)との間に関係がありました。ローンの金利と投資家の数の間には、負の関係がありました。

ただし、この研究はひとつの都市だけを調べた時系列の観察研究で、示しているのは相関であって因果ではありません。日本の損益通算の効果を示したものでもありません。

オーストラリア国立大学(ANU)の Tax and Transfer Policy Institute が公開しているワーキングペーパー(査読前)は、オーストラリアの税務申告データを使っています。2000年代半ばの税率改正の前後を比べたところ、税率が下がった人ほど、賃貸の赤字の物件を持つ割合が下がるという関係がありました。これは査読前の論文で、オーストラリアの制度を調べたものです。

計算表:赤字100万円で減る税と、売るときの税(税率7段階)

表の前提は次の5つです。所得税の税率の段階をまたがないこと、売った年の1月1日の時点で、持っている期間が5年を超えていること、売却益が出ること、令和8年分までの税率であること、令和9年からの防衛特別所得税を入れないことです。表の「赤字」は、減価償却費を含む不動産所得の赤字を指します。

所得税の税率の段階 赤字100万円で減る税 同じ100万円が売るときの長期譲渡所得に乗った場合の税 差(減る税−売るときの税)
5% 15万1,050円 20万3,150円 −5万2,100円
10% 20万2,100円 20万3,150円 −1,050円
20% 30万4,200円 20万3,150円 +10万1,050円
23% 33万4,830円 20万3,150円 +13万1,680円
33% 43万6,930円 20万3,150円 +23万3,780円
40% 50万8,400円 20万3,150円 +30万5,250円
45% 55万9,450円 20万3,150円 +35万6,300円
  • 減る税 = 100万円 × 所得税の税率 × 1.021(復興特別所得税2.1%)+ 100万円 × 10%(住民税)
  • 売るときの税 = 100万円 × 15% × 1.021 + 100万円 × 5%(住民税)= 15万3,150円 + 5万円 = 20万3,150円
  • 税率は国税庁 No.2260・No.3208と、総務省「個人住民税」によります。

差がプラスなら、持っている間に減る税のほうが、売るときの税より大きくなります。税率5%と10%の段階では差がマイナスです。この段階では、売るときにかかる税のほうが大きくなります。

所得税の税率7段階ごとに、赤字100万円で減る税と売るときの税20万3,150円、その差を並べた表。
赤字100万円の税の比較

土地の分の利息の制限を、よくある例の形で計算する

租税特別措置法41条の4は、不動産所得が赤字の年に、必要経費の中に土地を買うための借入金の利息がある場合のルールです。赤字のうち、その利息に当たる部分は、損益通算について「生じなかつたものとみなす」とされています。どの部分が当たるかの計算は、政令で定めることになっています。

よくある例の形に当てはめてみます。物件5,000万円(土地3,000万円・建物2,000万円)を全額ローンで買い、金利が2%、不動産所得の赤字が50万円の場合です。ここでは、借入金を土地と建物の価額の比で分けたと仮定します。

項目 金額
土地の分の借入金 3,000万円
土地の分の利息(3,000万円 × 2%) 60万円
不動産所得の赤字 50万円
損益通算できる額(赤字50万円 ≦ 土地の分の利息60万円) 0円

この例では、赤字の50万円が土地の分の利息60万円より小さいので、赤字の全額が損益通算の対象外になります。給与と相殺できる額は0円で、この赤字で給与にかかる税は減りません。土地の割合や金利、赤字の額が違えば、結果も変わります。

「短い年数で償却する」話の流れと、今のルール

「築古や海外の物件なら短い年数で償却できる」という話には、次のような流れがあります。

順 資料 書かれていること
1 会計検査院 平成27年度決算検査報告(上田の報告が引用) 国外の中古建物について、簡便法で出した耐用年数が実際の使用期間に合っていないおそれがある。賃貸料収入を上回る減価償却費で損失が出て、損益通算で所得税額が減る
2 税務大学校論叢 第96号(上田) 総合課税の所得(最高55%)を分離課税の所得(20%)に変えられる点を指摘。「節税と租税回避の境界付近の事例」
3 租税特別措置法41条の4の3(令和3年分から) 国外中古建物の不動産所得の損失のうち、償却費に相当する部分は、損益通算について生じなかったものとみなす
4 税務大学校論叢 第108号(広瀬) 制度を改正しても「また類似のスキームが開発される」状況

簡便法は、中古の資産の使える年数を見積もるのが難しいときに、決まった計算で耐用年数を出す方法です。国税庁の法人税のページ(No.5404)では、法定耐用年数の全部を過ぎた資産は、その法定耐用年数の20%の年数とし、2年に満たないときは2年とすると説明しています。

今のルールでは、令和3年分から、国外中古建物の損失のうち、耐用年数を「簡便法」などで計算した減価償却費に当たる部分は、損益通算できません。

不動産投資の相談やセミナーの前に、自分で確かめておく5つの点の一覧。
相談の前に確かめる点

よくある質問

赤字で税が戻っても、売るときに払い直すことになるのか

減価償却費を計上した分だけ建物の取得費が減るので、売るときの譲渡所得はその分増えます。売った年の1月1日の時点で、持っている期間が5年を超えていれば、その100万円には20万3,150円の税がかかります(国税庁 No.3208から計算)。持っている間に減る税との差は、税率の段階によって−5万2,100円から+35万6,300円です(上の計算表)。

自分の税率の段階では、100万円の赤字でいくら減るのか

所得税の税率が5%なら15万1,050円、10%なら20万2,100円、20%なら30万4,200円です。23%なら33万4,830円、33%なら43万6,930円、40%なら50万8,400円、45%なら55万9,450円です。復興特別所得税2.1%と住民税10%を含めた、令和8年分までの税率での計算です。

ローンの利息は全部経費になるのか

不動産所得を生む業務のための借入金の利息は、必要経費になります。ただし、不動産所得が赤字の年は、そのうち土地を買うための借入金の利息に当たる部分は、損益通算では生じなかったものとみなされます。

築古や海外の物件で短く償却する方法は、今も使えるのか

国外中古建物については、簡便法などで償却した減価償却費に当たる赤字は、令和3年分から損益通算できません。

次に読む

年収の段階ごとの節税の話をセミナーで聞く前に、上の計算表で自分の税率の段階を確かめておくと、話を当てはめやすくなります。

このサイトで次に調べる候補: 不動産投資 確定申告 やり方(不動産所得の赤字を給与と損益通算する申告の手順を知りたい人向け)

出典

この記事の数字と事実の出どころは、下の一覧にまとめています。

  1. 所得税法 第六十九条(損益通算). https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=340AC0000000033;article=69
  2. 租税特別措置法 第四十一条の四(不動産所得に係る損益通算の特例). https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=332AC0000000026;article=41_4
  3. 租税特別措置法 第四十一条の四の三(国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例). https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=332AC0000000026;article=41_4_3
  4. 国税庁 タックスアンサー No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1370.htm
  5. 国税庁 タックスアンサー No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1391.htm
  6. 国税庁 タックスアンサー No.2250 損益通算. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2250.htm
  7. 国税庁 タックスアンサー No.2260 所得税の税率. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
  8. 総務省 個人住民税. https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
  9. 国税庁 タックスアンサー No.3208 長期譲渡所得の税額の計算. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm
  10. 国税庁 タックスアンサー No.5404 中古資産の耐用年数(法人税). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5404.htm
  11. 総務省『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果』2024年(令和6年9月25日公表、調査の時点は2023年10月1日). https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/pdf/kihon_gaiyou.pdf
  12. 国土交通省『建築着工統計調査報告(令和7年度計分)』令和7年度. https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha714.pdf
  13. 広瀬 富雄(第108号)「所得税における減価償却に関する考察」税務大学校論叢. https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/108/03/index.htm
  14. 上田 正勝(第96号)「中古不動産の貸付けを行う個人に対する課税関係」税務大学校論叢. https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/96/02/index.htm
  15. Bangura, M., Lee, C. L.(2024)「The impact of negative gearing on the investment decisions of housing investors: the case of Greater Sydney」Journal of Housing and the Built Environment 39, 21-48. https://doi.org/10.1007/s10901-023-10069-3
  16. Tax and Transfer Policy Institute, ANU.「Rental Property Tax Deductions and Individual Investor Housing Demand」Working paper(年の記載なし). https://crawford.anu.edu.au/research/rental-property-tax-deductions-and-individual-investor-housing-demand
  17. 国税庁 タックスアンサー No.2100 減価償却のあらまし. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm

この記事は、AI で下書きし、公式の資料と論文で確かめてから公開しています。

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