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2社間・3社間のファクタリング違い:契約で譲渡が禁止でも売買は有効。でも取引先は支払いを拒める

2社間・3社間のファクタリング違い:契約で譲渡が禁止でも売買は有効。でも取引先は支払いを拒める
2026-10-21 公開・2026-11-04 更新

この記事の要点

  • 2社間・3社間のファクタリング違いは、取引先に知らせるかどうかです。3社間は取引先の承諾をもらって請求書を売り、2社間は取引先に通知も承諾の依頼もせずに売ります。
  • 取引先との契約に「譲渡してはいけない」という条項があっても、民法では請求書の売買そのものは有効です。ただし、条項を知っていた(または重い不注意で知らなかった)買い手に対しては、取引先は支払いを拒めます。取引の契約を切られる懸念も指摘されています。
  • 手数料は、民間の解説ページ2つとも、2社間の方を高めに書いています。契約書に「売主が買い戻す」などの条件がある契約は、貸金業に当たるおそれがあると金融庁は書いています。
この記事の目次(7)
  1. 2社間と3社間の違いは「取引先に知らせるか」
  2. 自分の請求書で受取額と年換算を出す表
  3. 契約の前に確かめる4つの点(買い戻しの条件に注意)
  4. よくある質問
  5. 次に読む
  6. 補足:条文・言葉の意味・登記の統計・研究
  7. 出典

2社間と3社間の違いは「取引先に知らせるか」

3社間は、取引先に知らせて承諾をもらう形です。2社間は、通知も承諾もしない形です。

2社間と3社間を、取引先への知らせ方、取引先以外の人への備え方、譲渡禁止の条項がある時、登記の費用の4つの点で比べた表。
2社間と3社間の違い

2社間なら取引先に知られないのですか

2社間は、売っただけでは取引先には知らされません。取引先に伝わるのは、次の2つの時です。

  • 売ったことを取引先に通知した時
  • 取引先に承諾を求めた時

民法では、この通知は売った人(売主)が取引先にします。

金融庁の注意喚起には、取引先からの集金を、業者が売主に任せる形の例が出ています。この形なら、お金は次のように流れます。

  • 売主が請求書(売掛金)を業者に売り、代金を受け取る
  • 取引先は、これまでどおり売主に払う
  • 売主は、取引先から受け取ったお金を業者に渡す

法人が債権譲渡登記をしても、取引先に知らせたことにはなりません。登記で備えられるのは、取引先以外の人(同じ売掛金を別に買った人など)に対してだけです。

どちらを選ぶかの整理

記事の中の事実だけで整理すると、次のとおりです。

  • 取引先に知らせたくない: 2社間。ただし手数料は、2つの解説ページとも2社間の方を高めに書いています。
  • 取引先の承諾が取れる: 3社間。手数料は、2つの解説ページとも低めに書いています。
  • 入金を急ぐ: freeeの解説は、「2社間ファクタリングでは最短で即日、遅くても1週間以内に入金というところが多くなっています。」と書いています。クレディセゾンの解説は、3社間を「比較的入金が遅いとされる」形と書いています。
  • どちらでも: 取引先との契約に譲渡を禁じる条項がないかを、先に確かめます。

手数料の相場はどのくらいですか

民間の解説ページでは、クレディセゾンが2社間10〜30%・3社間2〜20%と書いています。freeeは2社間10〜20%・3社間3〜5%です。2つのページで、幅も食い違います。相場の数字より、自分の請求書の見積を下の表に入れて、受取額と年換算で比べる方が確かです。

次は見積を取って、比べる段です。見積ごとに手数料と受取額を1行に並べて比べる表は、次の記事にまとめています。

ファクタリングを個人事業主が見積で比べるための1枚の表(Easy factorの公式の条件入り)

自分の請求書で受取額と年換算を出す表

2社間か3社間かが決まったら、見積の手数料がどれだけ重いかを、この表で確かめます。見積の手数料が高いか安いかを、1年あたりに直して比べるための表です。

「登記なし・登記あり」の列は、2社間で、取引先以外の人に備えて債権譲渡登記をするかどうかの違いです。3社間でも、登記をするなら同じ額がかかります。

使い方: 「自分の数字」の列に、自分の請求額・見積の手数料率・入金予定日までの日数を入れてください。例: 請求額100万円・手数料10%で30日後の入金なら、受取は90万円で、1年に直すと約135%の重さです。

項目 例:登記なし 例:登記あり 自分の数字
請求額 1,000,000円 1,000,000円
手数料率(計算の例) 10% 10%
手数料 100,000円 100,000円
登録免許税 0円 7,500円
司法書士の報酬など — 見積で確かめる
受取額 900,000円 892,500円
入金予定日までの日数 30日 30日
年換算の目安 約135% 約147%

登記をすると、受取額は登録免許税の7,500円だけ減り、年換算の目安は少し上がります。

目安: 金融庁は、お金の貸し借りなら年109.5%を超える利息の契約は無効になると書いています。ファクタリングは売買なので、比べる目安としてだけ使います。手数料率10%は計算の例で、相場ではありません。

計算のしかたを見る 例の約135%は、手数料10万円÷受取90万円で約11%、これが30日分なので365日に直した数字です。 - 受取額 = 請求額 ×(1 − 手数料率)− 登記の費用(登記をする場合だけ) - 年換算の目安 =(手数料 + 登記の費用)÷ 受取額 × 365 ÷ 入金予定日までの日数 注: 手数料率10%は計算の例で、相場ではありません。例の年換算は、登記なしが100,000 ÷ 900,000 × 365 ÷ 30です。登記ありは107,500 ÷ 892,500 × 365 ÷ 30です。登記ありの例は、登録免許税(債権5,000個以下の1件7,500円)だけを入れた額です。あとで登記を消すなら、1件1,000円が足されます。

契約の前に確かめる4つの点(買い戻しの条件に注意)

法人か個人か、譲渡を禁じる条項の有無、通知と承諾の形、買い戻しなどの条件の有無の4つを、契約の前に確かめるチェック表。
契約の前の4つの確認

4つ目の「売主が買い戻す」「売主自身の資金で支払う」は、売掛金の集金を業者から任されていて、集金できなかった時の決めごとです。金融庁は、このような契約は貸金業に当たるおそれがあるとしています。ほかにも、貸付けと同じ働きをする取引は当たるおそれがあります。

よくある質問

個人事業主はどちらを使えますか

取引先に知らせずに取引先以外の人に備える債権譲渡登記は、動産・債権譲渡特例法4条で主語が「法人」です。個人事業主の場合は、登記で備える形になるかどうかを、申し込む先に確かめてください。通知と承諾を定めた民法467条には、法人に限るという書き方はありません。

登記をする場合の登録免許税は、1件7,500円(債権5,000個以下)です。

2社間が「やばい」と言われるのはなぜですか

研究(堂下2019年)では、ファクタリングを装ったヤミ金融の二者間の取引で、被害の事例が報告されています。裁判では判決に一貫性がなく、利用した側が違約金を命じられた事例もあります。契約書の「買い戻す」「売主自身の資金で支払う」という条件は、金融庁が挙げる貸金業に当たるおそれの例です。

次に読む

補足:条文・言葉の意味・登記の統計・研究

取引先に知られるかの元になる条文と言葉の意味、登記の数、研究をまとめています。

条文・言葉の意味・登記の統計・研究を見る **なぜこうなるか(民法の条文)** 公式の条文で確かめると、違いの元は民法467条です。請求書(売掛金)を売っても、売った人が取引先に通知するか、取引先が承諾しなければ、取引先にもほかの人にも「対抗することができない」と書かれています。つまり、通知か承諾がないと、売ったことを取引先やほかの人に主張できません。 もう1つの違いの元は民法466条です。取引先との契約に譲渡を禁じる条項があっても、債権の譲渡は「その効力を妨げられない」とあります。ただし、条項を知っていた買い手などに対しては、取引先は支払いを拒めます。 **通知・承諾・債権譲渡登記・譲渡制限の意味** 通知は、売った人が取引先に「この売掛金を売りました」と知らせることです。承諾は、取引先が売られたことを認めることです。取引先以外の人(同じ売掛金を別に買った人など)に主張するには、通知や承諾を「確定日付のある証書」でする必要があります。 債権譲渡登記は、売掛金を売ったことを法務局の記録に残す仕組みです。動産・債権譲渡特例法4条では、法人が売掛金を売って登記をすると、取引先以外の人には、確定日付のある証書で通知したのと同じ扱いになります。ここで言う「取引先以外の人」に取引先は入らないので、登記をしても、取引先に対しては通知をしたことにはなりません。 登記には登録免許税がかかります。法務省の表では、1件に入れる債権が5,000個以下なら1件7,500円、5,000個を超えると1件15,000円です。登記を消す(抹消する)時は、1件1,000円かかります。 譲渡制限の意思表示とは、契約で「この債権は譲渡しない」「譲渡に条件をつける」と決めることです。民法466条では、このような決めごとがあっても譲渡は有効で、取引先は条項を知っていた買い手に支払いを拒めます。2017年に公的な会議へ出された都銀懇話会の資料は、承諾を得ない譲渡が取引先との約束違反と見られ、取引の契約の解除や更新の見送りにつながる可能性を指摘しています。これは2020年の改正民法の施行より前に示された懸念です。 **法務省の登記統計で見る債権譲渡登記(令和7年)** 公式の表を並べると、令和7年の債権譲渡登記は、全部の登記の件数では0.6%なのに、個数では68.5%を占めます。登録免許税が「債権5,000個以下で1件」と数えるように、1件の登記に多くの債権をまとめて入れられるためと考えられます。この件数と個数の開きは、調べて分かった意外な点です。
法務省の登記統計で、債権譲渡登記は令和7年に件数の0.6%、個数の68.5%を占め、件数の目安は約7.3万件だったことを示す図。
債権譲渡登記の割合
この統計は登記の数なので、2社間と3社間を分けて数えてはいません。債権を売った目的でも分けていないため、どれだけがファクタリングの物かは、この統計からは分かりません。 細かい数字も残しておきます。令和7年の登記は全部で約1,215万件、登記した物の数(個数)は約8,170万個で、前の年と比べると件数は5.0%、個数は28.2%減っています。債権譲渡登記が全体に占める割合は、件数では令和2〜5年が0.3%、令和6年が0.4%、令和7年が0.6%、個数では67.1%、68.0%、63.8%、63.2%、75.9%、68.5%と動いており、法務省は令和7年の個数について「依然として高い割合を占めている」と書いています。 **研究で分かっていること** 世界銀行のKlapper(2005年)は、ファクタリングの特徴を、貸し手のお金が売り手全体の信用ではなく売掛金の値打ちに結びつく点にあると説明しています。リスクの高い売り手が、信用の高い取引先に信用のリスクを移せる、という見方です。これはファクタリング全体の話で、2社間と3社間を分けたものではありません。 堂下(2019年)の事例調査では、違法性の高い二者間ファクタリングがヤミ金融として中小企業の間で被害を広げており、裁判の判決には一貫性がなく、中小企業の側が多額の違約金の支払いを命じられた事例も存在すると報告されています。買い戻しなどの条件がついた2社間の契約を考えている人には当てはまりやすく、3社間やファクタリング全体の様子には当てはまりません。 堂下・的場(2020年)の実態調査では、新型コロナ禍(景気が急速に悪化した時期)の中で中小企業向けの二者間ファクタリングの取引が減り、SNS上の個人間融資が5月以降に活発になっている可能性が示唆されました。コロナ禍の2020年の動きを見たもので、いまの取引の量を知りたい人には当てはまりません。 Klapper(2005年)の研究では、経済が発展し、信用情報の機関が整った国ほどファクタリングの量が大きいという関係がありました。国どうしを比べた話で、日本で2社間と3社間のどちらを選ぶかには当てはまりません。 **研究の読み方** | 研究 | 調べ方 | 対象と人数 | 分かったこと | 限界 | |---|---|---|---|---| | 堂下(2019年) | 事例調査(報道・判決の整理と、利用した中小企業へのインタビュー) | 日本の二者間ファクタリングの事件と裁判例。インタビューの人数は要旨に書かれていない | 偽装したヤミ金融の被害が広がり、判決に一貫性がない | 違法な偽装の取引だけを扱い、二者間全体の実態ではない | | 堂下・的場(2020年) | 実態調査(観察) | 新型コロナ禍(2020年)の二者間ファクタリングとSNS上の個人間融資 | 二者間は減り、個人間融資は5月以降に活発になった可能性 | 2020年中の動きを見たもので、結論は「可能性が示唆された」の段階 | | Klapper(2005年) | 国どうしの比較(相関)とメキシコの事例 | 世界の国々のファクタリングの量と、経済・制度の指標 | 経済が発展し信用情報の機関が整った国ほど量が大きい | 国の単位の相関で、日本の2社間・3社間には触れていない | 3本とも要旨を読んだ範囲です。どれもランダム化の試験ではないので、原因と結果までは分かりません。

出典

  1. 民法 第466条・第467条(e-Gov法令検索)
  2. 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律 第4条第1項・第2項(e-Gov法令検索)
  3. 法務省「(債権譲渡登記等)添付書面・登録免許税」. https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00180.html
  4. 法務省『登記統計』令和7年 結果の概要(第1表・第2表). https://www.moj.go.jp/content/001462965.pdf
  5. 金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」. https://www.fsa.go.jp/user/factoring.html
  6. 都銀懇話会「債権法改正を見据えた資金調達の円滑化」規制改革推進会議 投資等ワーキング・グループ 資料1-3(2017年9月26日). https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/toushi/20170926/170926toushi03.pdf
  7. 堂下浩(2019)「ファクタリングを偽装したヤミ金融の被害に関する事例調査」パーソナルファイナンス研究 6, 57-66. https://doi.org/10.20752/japf.6.0_57
  8. 堂下浩・的場智也(2020)「新型コロナ禍における違法性のある融資取引に関する実態調査」パーソナルファイナンス研究 7, 5-12. https://doi.org/10.20752/japf.7.0_5
  9. Klapper, L.(2005)"The role of factoring for financing small and medium enterprises" World Bank Policy Research Working Paper No.3593(2006年に Journal of Banking & Finance 30(11) 3111-3130 に掲載・https://doi.org/10.1016/j.jbankfin.2006.05.001). https://econpapers.repec.org/paper/wbkwbrwps/3593.htm
  10. クレディセゾン ファクタリングの解説ページ(2025年11月28日更新). https://www.saisoncard.co.jp/credictionary/financing/factoring_20210804.html
  11. freee ファクタリングの解説ページ(2025年12月16日更新). https://www.freee.co.jp/kb/kb-finance/what-is-factoring/

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