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FOMC 声明の翌営業日における資源国通貨の対米ドル下落:2003〜2026 年の 5 分足データによる検証

FOMC 声明の翌営業日における資源国通貨の対米ドル下落:2003〜2026 年の 5 分足データによる検証
2026-11-02 更新

研究ノート 03・西原商事(アルゴス)・2026 年 11 月 2 日

要旨

本研究は、米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明の翌営業日に、資源国通貨(豪ドル、ニュージーランド・ドル、ノルウェー・クローネ、カナダ・ドル)が米ドルに対して下落するかを、2003 年 8 月から 2026 年 9 月までの FOMC の翌営業日について、5 分足データで検証した。検証に用いたロンドン時間 10:30→17:00 の窓は、日の印を無作為に付け替える方法で探索の広さを補正した探索から得られた(t = 5.51、偶然の線 4.48)。窓を固定したうえで、結果を見る前に 5 つの予言が記録された。資源国通貨 4 通貨を等ウェイトで束ねた米ドル買いの平均は 1 回あたり +17.63 bp(Newey-West の t = 4.16、176 回)であり、5 つの予言はすべて予言どおりの向きであった。2025 年の水準のスプレッドと手数料を差し引いた後の平均は +15.60 bp(Newey-West の t = 4.29、195 回)であった。一方、日の種類(179 種類)まで含めた探索全体の偶然の線 6.03 に対し、費用前の t は 5.24 にとどまり、偶然と区別できなかった。直近 5 年(2021〜2025 年)を見つける期間とする採用の基準でも、40 回で t = 1.29(p = 0.206)であり、採用されなかった。窓と理由はいずれも結果を見た後に定められたため、本研究の結果は、今後の FOMC で確かめられるべき仮説として扱われる。

キーワード:FOMC、資源国通貨、日中の季節性、外国為替市場のマイクロストラクチャー、多重検定

JEL 分類:E52, F31, G14, G15

Abstract

This note examines whether commodity currencies (the Australian dollar, the New Zealand dollar, the Norwegian krone, and the Canadian dollar) depreciate against the U.S. dollar on the business day following Federal Open Market Committee (FOMC) statements, using five-minute data for the post-FOMC business days from August 2003 to September 2026. The test window, 10:30–17:00 London time, was obtained from a search whose breadth was corrected by randomly reassigning event-day labels (t = 5.51 against a threshold of 4.48). With the window fixed, five predictions were recorded before the results were observed. An equally weighted long-dollar position against the four currencies earned +17.63 bp per event (Newey-West t = 4.16, 176 events), and all five predictions held in the predicted direction. After deducting spreads and commissions at their 2025 levels, the mean return was +15.60 bp (Newey-West t = 4.29, 195 events). However, when the search over all 179 day types is taken into account, the pre-cost t-statistic of 5.24 falls below the family-wise threshold of 6.03 and cannot be distinguished from chance. Under an adoption rule that uses the most recent five years (2021–2025) as the discovery period, the effect was not adopted (40 events, t = 1.29, p = 0.206). Because both the window and the explanation were chosen after observing the data, the result should be treated as a hypothesis to be tested on future FOMC meetings.

Keywords: FOMC, commodity currencies, intraday seasonality, foreign exchange microstructure, multiple testing

1 序論

1.1 背景

外国為替市場の日中の収益率には、時刻に依存した規則的な型があることが報告されている。Krohn et al.(2021)は、1999 年 1 月から 2019 年 12 月の G9 通貨について、東京・フランクフルト(ECB)・ロンドンの主要な基準レート(フィックス)の前に米ドルが上昇し、その後に下落する反転の型を報告し、制約を受けたディーラーの仲介による説明を提案した。

金融政策の発表の日についても、資産の収益率の偏りが報告されている。Mueller et al.(2017)は、米ドルを売りほかの通貨を買う売買の超過収益が、定例の FOMC の発表のある日に有意に大きいこと、その超過収益が米国との金利差の大きい通貨ほど大きく、金融政策の不確実性とともに増え、金融緩和の局面でさらに大きいことを報告した。Lucca and Moench(2013)は、定例の FOMC の金融政策の決定を前にして、米国株に大きな平均の超過収益があることを報告した。

本研究のデータでも、FOMC の声明の当日の発表前(ニューヨーク時間の前日 19:00→当日 14:00)に、9 通貨に対して米ドルは平均 11.02 bp 下落していた(t = 3.57、195 日)。この結果は、Mueller et al.(2017)の報告と同じ向きである。

1.2 問題と本研究の新規性

上記の研究は、発表の当日とその前の時間を扱っている。本研究が参照した文献の範囲では、発表の翌営業日の欧州時間について、通貨ごとの日中の型を扱った研究は確認されなかった。本研究の新規性は次の 4 点にある。

  1. FOMC の声明の翌営業日のロンドン時間に限って、通貨ごとの向きの違いを測った。
  2. 窓を固定した後、結果を見る前に予言を書いた台本を保存し、その保存時刻と結果の出力時刻を記録した(2.4 節)。
  3. 探索の広さを補正した偶然の確かめを、日の種類を固定した場合と、日の種類まで含めた場合の 2 段で行った。
  4. 費用の控除、期間の分割、ウォークフォワード(過去のデータだけで選び、選んだ後の年で成績を測る方法)を同じ基準で当てた。

2 方法

2.1 データ

為替レートには、デューカスコピー・ジャパン株式会社が提供する取引レートのティックを 5 分足に集約したデータ(銘柄ごとに買値と売値の差であるスプレッドを含む)が用いられた。期間の終わりは 2026 年 10 月 9 日である。各通貨ペアの使用日数は、AUDUSD が 6,016 日、NZDUSD が 6,018 日、USDCAD が 6,018 日、USDNOK が 4,612 日であった。USDNOK は、スプレッドが一定の高い値で記録されていた 2003〜2008 年を除いた。平日のうち 1 本以上の足がある日を使い、12 月 25 日と 1 月 1 日を除いた。足の無い 5 分の値は直前の値で埋めた。

1 回の損益は、窓の始まりの時刻から終わりの時刻までの値動きを、その日の値段で割った bp(0.01%)で表した。ロンドン時間とニューヨーク時間の窓は、英国と米国の夏時間に合わせて UTC の時刻をずらした。

FOMC の日付は、連邦準備制度理事会の会合の日程と各会合の声明のページから作った暦(定例 189 回、臨時 9 回、書面決議 1 回)を用いた(Board of Governors of the Federal Reserve System, n.d.)。各会合の声明のページの URL は、暦のファイルに 1 行ずつ記録されている。政策金利の変更の判定には実効フェデラル・ファンド金利(Board of Governors of the Federal Reserve System, 2026)を、期待インフレ率には 10 年のブレークイーブン・インフレ率(Federal Reserve Bank of St. Louis, 2026)を用いた。使用した値は、実効フェデラル・ファンド金利が 2026 年 8 月 27 日まで、期待インフレ率が 2026 年 8 月 28 日までである。

2.2 窓の決め方と、試した数

窓は、次の 4 段の探索と確かめの経緯で決まった。各段の数値は表 1 に示す。

  1. 日の種類と時刻の探索(2026 年 11 月 1 日)で、FOMC の翌営業日に AUDUSD がニューヨーク時間 5:00→10:00 に下落する型が見つかった(+9.15 bp、t = 2.76、175 回)。FOMC の当日の豪ドルの動きと翌営業日の下落の相関は 0.018 であり、「当日の動きの戻り」という説明は支持されなかった。
  2. 探索の広さを補正する偶然の確かめ(11 通貨ペア × 3 つの時計 × 1,176 の窓 × 179 種類の日、日ごとに向きを入れ替えた偶然の世界 1,000 回)では、偶然の世界の最大の |t| の上位 5% の線が 5.85 であり、この型の t(−2.93)は線に届かなかった。
  3. 「FOMC の翌営業日は 9 通貨に対して米ドル高」という理由(ニューヨーク時間の前日 19:00→当日 16:30)は、+4.41 bp(t = 1.08、197 日)にとどまった。
  4. 理由の分け直しとして、FOMC の翌営業日に限って、11 通貨ペア × 3 つの時計 × 1,176 の窓のすべてで「その日の平均 − ほかの日の平均」の t を計算し、最大の |t| を、日の印を同じ日数の無作為の日に付け替えた 200 回の最大の |t| の上位 5% の線と比べた。最大は USDCAD のロンドン時間 10:30→17:00 の +17.47 bp(t = 5.51)であり、線 4.48 を超えた。

この 4 段目の窓が、本研究の検証の窓として固定された。窓は 30 分刻みの 1,176 通りから選ばれた物であり、事前に理論から決めた窓ではない。

表 1 検証の窓が決まるまでの経緯

段 対象 平均(bp) t 回数 偶然の線 判定
1 AUDUSD 売り、NY 5:00→10:00 +9.15 2.76 175 ― 候補
2 同上(探索の広さで補正) ― −2.93 175 5.85 偶然と区別できない
3 9 通貨に対する米ドル買い、NY 前日 19:00→16:30 +4.41 1.08 197 3.02 届かない
4 USDCAD 買い、ロンドン 10:30→17:00 +17.47 5.51 195 4.48 線を超える

注:段 1 の t は Newey-West(ラグ 5)を日付の順で計算し直した値である(元の記録 _ag_r5_why5_20261101.log では 2.91、直した値は _ag_r5_paper_order_fix2_20261102.log、2.5 節)。段 2 の t は豪ドル買いの向きの単純な t(マイナスは豪ドル安)。段 3 の線 3.02 は、向きのある理由 20 個で有意水準 5% を割った線である。段 4 の平均は「その日 − ほかの日」の差、t は 2 つの群の差の t である。

2.3 日の定義

FOMC の翌営業日の数え方は、台本の作りによって 2 通りある。予言の確かめ(2.4 節、表 2)では、土日と日米の祝日を除いた営業日の並びで、FOMC の日の次の営業日を翌営業日とし、4 通貨のうち 2 通貨以上のデータがある日を使った(176 回)。費用の計算とウォークフォワード(表 3、表 4)では、FOMC の日の次の平日(FOMC の日そのものを除く)を翌営業日とし、各通貨ペアのデータがある日を使った(195 回)。回数の差は、この定義の差による。

2.4 結果を見る前に固定した理由と予言

理由(後付けの仮説)は次のとおりである。「FOMC の翌営業日の欧州と米国の朝に、世界の運用者が FOMC の結果を受けて資産の配分を組み直し、資源国通貨を売って米ドルを買う」。

この理由から、次の 5 つの予言が、結果を見る前に台本 _ag_r5_fomc_next_20261101.py に書かれた。台本の保存時刻は 2026 年 11 月 1 日 23:30:26(日本時間)、結果の出力時刻は 23:33:10 であり、台本の SHA-256 の先頭 16 桁は 37f0b51cc6b2b20a である。

  • P1:豪ドル・NZ ドル・ノルウェー・クローネでも、同じ窓で米ドル高になる(t ≥ 2)。ユーロと英ポンドは資源国通貨より小さい。円とスイス・フランは米ドル高にならない。
  • P2:金利を変えた FOMC(実効フェデラル・ファンド金利が、FOMC の日より前の直近の値から翌営業日の値までに 0.1% 以上動いた回)は、据え置いた回より大きい。
  • P3:FOMC の日に期待インフレ率が下がった回は、上がった回より大きい。
  • P4:対照として、ECB と日本銀行の会合の翌営業日の同じ窓では、資源国通貨の束に米ドル高が出ない(|t| < 2)。
  • P5:2003〜2014 年と 2015〜2026 年の両方でプラスになる。

資源国通貨の束は、AUDUSD 売り・NZDUSD 売り・USDCAD 買い・USDNOK 買いの 4 本を等ウェイトで平均した物である。

2.5 統計量と費用

予言の確かめと費用の計算の t は、Newey-West の方法(ラグ 5)で計算した。ウォークフォワードと探索全体の偶然の確かめの t は、回ごとの値の単純な t である。

予言の確かめの台本(_ag_r5_fomc_next_20261101.py)は、P1・P4・P5 の Newey-West の t を、回ごとの値を日付の順ではない順(Python の集合の内部の順)に並べたまま計算していた。Newey-West の t は値の並びに依存するため、この並びでは系列の相関が正しく補正されない。本稿の執筆中にこの誤りが見つかり、同じ窓・同じ日・同じ通貨・同じ向きで、並びだけを日付の順に直して計算し直した(_ag_r5_paper_order_fix_20261102.py)。P1・P4・P5 は、集合の順のまま計算し直した t が元の記録の t と一致し、誤りが再現された。P2・P3 は、元の台本が FOMC の日の順に値を並べていたため、日付の順の t が元の記録の t と一致した。平均と回数は並びに依存しないため変わらない。本稿の表 2 の t は日付の順に直した値であり、元の記録の値は付録の表 A1 に示す。

費用は、往復の手数料(取引額 100 万円あたり 46 円、すなわち 0.46 bp)に、窓の始まりと終わりの時刻のスプレッドの平均を足した物である。スプレッドには、2025 年の各曜日・各 5 分の時刻の中央値を、すべての年に当てはめた。

2.6 ウォークフォワードと探索全体の偶然の確かめ

ウォークフォワードでは、2008〜2026 年の各年 Y について、直前の 5 年(Y−5〜Y−1)の費用控除後の t が線を超えた候補だけを、年 Y に取引した。線は、その 5 年について、全候補の日ごとの損益の向きを日ごとに同じ符号で入れ替えた偶然の世界 1,000 回の「候補の中の最大の t」の上位 5% であり、年ごとに 2.72〜2.95 であった。取引した年が 3 年以上で、合計がプラスかつ t ≥ 2 の時に合格とした。

探索全体の偶然の確かめでは、16 通貨ペア × 3 つの時計 × 1,176 の窓 × 179 種類の日の全体で、日ごとに向きを入れ替えた偶然の世界 1,000 回の最大の |t| の上位 5% を線とした。

最後に、2026 年 11 月 2 日に定められた採用の基準を当てた。この基準では、直近 5 年(2021〜2025 年)を見つける期間とし(取引が 15 回に満たなければ前の年へ延ばす)、その期間の費用前の 1 回の損益の t から p 値(t 分布、自由度は回数 − 1、両側)を求め、63 銘柄 × 3 つの時計 × 1,176 の窓 × 日の種類の全体の探索で、偽のデータ 1,000 回の最小の p 値の下位 5% の線(2.09×10⁻⁸)より小さいことを求める。あわせて、見つける期間と、それより前の検証期(2003〜2020 年)の両方で、費用控除後の資産曲線の 5 つの期間ごとの最小値が切り上がって最後の値がプラスであること、全期間の費用控除後の合計がプラスであることを求める。

3 結果

3.1 予言の確かめ

表 2 に 5 つの予言の結果を示す。資源国通貨の束の米ドル買いは、FOMC の翌営業日に平均 +17.63 bp(t = 4.16、176 回)であった。

表 2 FOMC 声明の翌営業日のロンドン時間 10:30→17:00 の米ドル買い(費用前)

予言 対象 平均(bp) t 回数 比べる値(bp) 予言どおりか
P1 USDNOK 買い +23.78 3.84 130 それ以外の日 +1.11 ○
P1 AUDUSD 売り +16.76 4.08 175 それ以外の日 −0.35 ○
P1 USDCAD 買い +16.36 3.50 176 それ以外の日 −0.64 ○
P1 NZDUSD 売り +14.64 2.97 176 それ以外の日 −0.84 ○
P1 EURUSD 売り +9.79 2.66 178 それ以外の日 +0.87 ○(資源国通貨より小さい)
P1 GBPUSD 売り +5.03 1.46 178 それ以外の日 −0.29 ○(資源国通貨より小さい)
P1 USDCHF 買い +1.66 0.44 178 それ以外の日 −0.04 ○(米ドル高にならない)
P1 USDJPY 買い −2.53 −0.63 178 それ以外の日 +0.90 ○(米ドル高にならない)
― 資源国通貨の束 +17.63 4.16 176 ― ―
P2 束・金利を変えた回 +22.72 1.88 47 据え置いた回 +15.88(t = 3.26、128 回) ○(差の向きのみ)
P3 束・期待インフレ率が下がった回 +25.70 5.19 72 上がった回 +12.14(t = 2.20、103 回) ○
P4 束・ECB の翌営業日 +2.21 0.64 223 ― ○(出ない)
P4 束・日本銀行の翌営業日 −3.11 −0.98 270 ― ○(出ない)
P5 束・2003〜2014 年 +21.47 3.10 90 ― ○
P5 束・2015〜2026 年 +13.61 2.95 86 ― ○

注:平均・回数・比べる値の出典は _ag_r5_fomc_next_20261101.log、t の出典は _ag_r5_paper_order_fix_20261102.log(Newey-West、ラグ 5、回ごとの値を日付の順に並べた値)。P2 の「金利を変えた回」の t は 1.88 であり、2 に届いていない。

FOMC 声明の翌営業日のロンドン時間 10:30 から 17:00 の米ドル買いの平均を 8 通貨で比べた横棒グラフ。ノルウェー・クローネ、豪ドル、カナダ・ドル、NZ ドルが大きく、円とスイス・フランはほぼゼロかマイナス。
出典: 本研究の計算(_ag_r5_fomc_next_20261101.json、_ag_r5_paper_order_fix_20261102.json)

図 1 FOMC 声明の翌営業日のロンドン時間 10:30→17:00 における通貨別の米ドル買いの平均(費用前)。棒は FOMC 声明の翌営業日、縦線はそれ以外の日の平均を示す。濃い棒は資源国通貨である。

3.2 費用控除後の成績

表 3 に費用控除後の成績を示す。束の費用控除後の平均は +15.60 bp(Newey-West の t = 4.29、195 回)であり、24 年のうち 17 年で合計がプラスであった。回ごとの値の単純な t は 4.62 であり、195 回のうち 119 回がプラスであった。最大の損失は 2009 年 3 月 19 日の −144.29 bp、最大の利益は +194.17 bp であった。

表 3 費用控除後の成績(ロンドン時間 10:30→17:00、FOMC 声明の翌営業日)

売買 回数 費用前(bp) 費用(bp) 費用控除後(bp) t プラスの年
資源国通貨の束 195 17.69 2.09 15.60 4.29 17/24
豪ドル売り 194 17.11 1.72 15.39 4.12 19/24
カナダ・ドル売り 195 16.77 1.51 15.26 3.69 18/24
ノルウェー・クローネ売り 146 25.60 3.70 21.90 4.52 13/18

注:出典は _ag_r5_fomc_next_trade_20261101.log。t は Newey-West(ラグ 5)。資源国通貨の束の数値は、回ごとの損益を書き出す別の台本 _ag_r5_paper_series_20261102.py で再計算し、回数・平均・t が一致することを確かめた。

FOMC 声明の翌営業日の資源国通貨の束の米ドル買いについて、費用控除後の損益を 2003 年から 2026 年まで累積した折れ線グラフ。2008 年から 2020 年にかけて上昇し、2021 年以降の傾きは小さい。
出典: 本研究の計算(_ag_r5_paper_series_20261102_fomc_basket.csv)

図 2 資源国通貨の束の米ドル買いの費用控除後の累積損益(195 回、単位 bp)。破線は P5 の期間の境(2015 年 1 月)を示す。

3.3 探索の広さと期間の確かめ

表 4 に、探索の広さを補正した確かめと、期間を分けた確かめの結果を示す。63 銘柄に広げた理由の分け直し(ロールオーバーの時刻をまたぐ窓を除く)でも、FOMC の翌営業日の最大は CADHKD のロンドン時間 10:00→17:00 の −19.65 bp(t = −5.59、165 日)であり、線 4.86 を超えた。香港ドルは 1 米ドル=7.75〜7.85 香港ドルの範囲に保たれているため(Hong Kong Monetary Authority, n.d.)、CADHKD の下落は、カナダ・ドルの対米ドルの下落で近似できる。

ウォークフォワードでは、2012〜2022 年の 11 年に取引の対象となり、合計は 1 回 100 万円あたり 17.3 万円(t = 4.56)、11 年のうち 10 年がプラスであった。2008〜2011 年と 2023〜2026 年は、直前 5 年の t が線に届かず、取引の対象にならなかった。

日の種類まで含めた探索全体の偶然の確かめでは、費用前の単純な t は 5.24 であり、線 6.03 に届かなかった。偶然の世界でこの値を超えた割合は 0.492 であった。

採用の基準では、見つける期間(2021〜2025 年)の 40 回の t は 1.29(p = 0.206)であり、線に届かず、採用されなかった。資産曲線の形の条件は、見つける期間と検証期の両方で満たした。

表 4 探索の広さと期間の確かめ

確かめ 結果 線 判定
日の種類を固定した探索(11 通貨ペア) t = 5.51(USDCAD) 4.48 超える
日の種類を固定した探索(63 銘柄) t = −5.59(CADHKD) 4.86 超える
日の種類まで含めた探索(16 通貨ペア、179 種類の日) t = 5.24 6.03 偶然と区別できない
ウォークフォワード(2008〜2026 年) 11 年取引、t = 4.56、10/11 年プラス 取引した年の線 2.72〜2.95 合格
採用の基準(見つける期間 2021〜2025 年、63 銘柄の探索で補正) 40 回、t = 1.29、p = 0.206 p = 2.09×10⁻⁸ 不採用
資産曲線 5 つの期間ごとの累積損益の最小値が期間を追うごとに大きくなる、最長の横ばい 2.1 年、利益の合計÷損失の合計 2.52 ― 合格

注:出典は _ag_r5_reason_fix_20261101.json、_ag_r5_reason_fix_all63_20261101.json、_ag_argos_unified_20261102_snap0937.json、_ag_argos_newrule_20261102_snap1055.json。資産曲線の 5 つの期間は 2003〜2007 年、2008〜2012 年、2013〜2017 年、2018〜2022 年、2023〜2026 年である。資産曲線の現在の落ち込みは 1 回 100 万円あたり −1.5 万円、過去最大の落ち込みは −2.2 万円であった。

4 考察

4.1 理由の推論

予言 5 つが予言どおりの向きであったことは、「FOMC の翌営業日の欧州と米国の朝に、資源国通貨が米ドルに対して売られる」という型と整合的である。通貨の並び(ノルウェー・クローネ、豪ドル、カナダ・ドル、NZ ドル、ユーロ、英ポンド、スイス・フラン、円の順に米ドル高が小さくなる)は、景気に敏感な通貨ほど売られ、逃避先とされる通貨は売られないという順と一致する。このことから、FOMC の結果を受けた運用者のリスクの減らしが翌営業日の欧州時間に執行される可能性が示唆される。

P3 で、期待インフレ率が下がった回の米ドル買いは +25.70 bp であり、上がった回の +12.14 bp の約 2 倍であった。期待インフレ率の低下が景気の弱さの見通しを伴う場合に、景気に敏感な通貨がより売られるという解釈と整合的である。ただし、この解釈は期待インフレ率の変化と FOMC の内容の関係を直接に測った物ではない。

一方で、「資源国」という区分そのものが原因であるとは示されていない。予備の探索(ニューヨーク時間 5:00→10:00 の窓)では、資源国でないスウェーデン・クローナの米ドル高(+15.24 bp、t = 2.96、130 回)が、ノルウェー・クローネ(+15.48 bp、t = 2.68、130 回)と同じ大きさであった。したがって、売られる通貨の範囲は資源国通貨に限られず、景気に敏感な通貨全般である可能性がある。スウェーデン・クローナは、検証の窓(ロンドン時間 10:30→17:00)の予言に含めておらず、この窓では測っていない。

Mueller et al.(2017)が報告した FOMC の当日の米ドル安と、本研究の翌営業日の米ドル高は、向きが逆である。しかし、FOMC の当日の豪ドルの動きと翌営業日の下落の相関は 0.018 であり、当日の動きが翌日に戻るという単純な関係は確認されなかった。Krohn et al.(2021)が報告したロンドンのフィックス(16:00)の前後の反転は、ふだんの日の型であり、本研究の窓はそのフィックスを含む。ふだんの日の同じ窓の平均は、資源国通貨の 4 通貨で −0.84〜+1.11 bp であり、FOMC の翌営業日の値はこれを大きく上回った。

4.2 限界

本研究には次の限界がある。

  1. 窓は、1,176 通りの窓からの探索で見つかった物である。日の種類を固定した場合の線は超えたが、日の種類まで含めた探索全体の線(6.03)には届かなかった(t = 5.24)。FOMC の翌営業日という日の種類そのものも、日の種類の探索から見つかった物である。
  2. 理由は、窓を見た後に立てた物である。P1 の豪ドル・NZ ドル・ノルウェー・クローネは、窓を見つけた探索の 11 通貨ペアに含まれていたため、P1 は独立のデータによる確かめではない。
  3. P2(金利を変えた回)の t は 1.88 であり、差の向きだけが予言どおりであった。
  4. 予言の確かめ(176 回)と費用の計算(195 回)では、翌営業日の定義が異なる(2.3 節)。
  5. 費用には 2025 年のスプレッドをすべての年に当てはめた。過去のスプレッドは 2025 年より広かった可能性があり、過去の年の費用は小さめに見積もられている可能性がある。約定の遅れ(スリッページ)は含めていない。
  6. データは 1 社の取引レートであり、別の提供元のデータや取引量のデータでは確かめていない。運用者の注文の流れは直接には観測していない。
  7. 期待インフレ率と政策金利のデータは 2026 年 8 月下旬までであり、2026 年 9 月の FOMC は P2 と P3 に含まれない。
  8. ウォークフォワードでは、2023〜2026 年は取引の対象にならなかった。2015〜2026 年の平均(+13.61 bp)は、2003〜2014 年の平均(+21.47 bp)より小さく、直近 5 年の 40 回では t = 1.29 にとどまった。

4.3 今後の課題

第 1 に、2026 年 10 月 28 日以降の FOMC の翌営業日について、本研究の窓・束・費用を変えずに成績を記録し、本研究で使っていないデータで確かめる。第 2 に、スウェーデン・クローナなど資源国でない景気に敏感な通貨を、同じ窓で測る。第 3 に、米国商品先物取引委員会の運用者別の建玉や、店頭の約定のデータで、翌営業日の欧州時間に注文が集まるかを確かめる。

5 結論

2003〜2026 年の 5 分足データでは、FOMC の声明の翌営業日のロンドン時間 10:30→17:00 に、資源国通貨 4 通貨は米ドルに対して平均 +17.63 bp(t = 4.16)下落し、結果を見る前に記録した 5 つの予言はすべて予言どおりの向きであった。費用控除後も平均 +15.60 bp(t = 4.29)が残り、ウォークフォワードでも 11 年のうち 10 年がプラスであった。一方、日の種類まで含めた探索全体では偶然と区別できず(t = 5.24、線 6.03)、直近 5 年を見つける期間とする採用の基準でも採用されなかった(t = 1.29)。このため、本研究の結果は確立した事実ではなく、今後の FOMC で確かめられるべき仮説である。

参考文献

Board of Governors of the Federal Reserve System. (n.d.). Meeting calendars and information. Retrieved November 2, 2026, from https://www.federalreserve.gov/monetarypolicy/fomccalendars.htm

Board of Governors of the Federal Reserve System. (2026). Federal funds effective rate (DFF) [Data set]. FRED, Federal Reserve Bank of St. Louis. Retrieved August 30, 2026, from https://fred.stlouisfed.org/series/DFF

Federal Reserve Bank of St. Louis. (2026). 10-year breakeven inflation rate (T10YIE) [Data set]. FRED. Retrieved August 30, 2026, from https://fred.stlouisfed.org/series/T10YIE

Hong Kong Monetary Authority. (n.d.). Linked exchange rate system. Retrieved November 2, 2026, from https://www.hkma.gov.hk/eng/key-functions/money/linked-exchange-rate-system/

Krohn, I., Mueller, P., & Whelan, P. (2021). Foreign exchange fixings and returns around the clock (Staff Working Paper No. 2021-48). Bank of Canada. https://www.bankofcanada.ca/wp-content/uploads/2021/10/swp2021-48.pdf

Lucca, D. O., & Moench, E. (2013). The pre-FOMC announcement drift (Staff Report No. 512). Federal Reserve Bank of New York. https://www.newyorkfed.org/research/staff_reports/sr512.html

Mueller, P., Tahbaz-Salehi, A., & Vedolin, A. (2017). Exchange rates and monetary policy uncertainty. The Journal of Finance, 72(3), 1213–1252. https://doi.org/10.1111/jofi.12499

付録

表 A1 予言の確かめの t:元の記録の値と、日付の順に直した値

対象 平均(bp) 元の記録の t 日付の順の t 単純な t 回数
P1 USDNOK 買い +23.78 4.58 3.84 4.01 130
P1 AUDUSD 売り +16.76 5.29 4.08 4.42 175
P1 USDCAD 買い +16.36 5.70 3.50 4.79 176
P1 NZDUSD 売り +14.64 3.86 2.97 3.42 176
P1 EURUSD 売り +9.79 3.00 2.66 2.61 178
P1 GBPUSD 売り +5.03 1.24 1.46 1.39 178
P1 USDCHF 買い +1.66 0.46 0.44 0.42 178
P1 USDJPY 買い −2.53 −0.83 −0.63 −0.72 178
資源国通貨の束 +17.63 5.88 4.16 4.89 176
P2 金利を変えた回 +22.72 1.88 1.88 2.63 47
P2 据え置いた回 +15.88 3.26 3.26 4.16 128
P3 期待インフレ率が下がった回 +25.70 5.19 5.19 5.32 72
P3 期待インフレ率が上がった回 +12.14 2.20 2.20 2.38 103
P4 ECB の翌営業日 +2.21 0.73 0.64 0.62 223
P4 日本銀行の翌営業日 −3.11 −1.15 −0.98 −1.06 270
P5 2003〜2014 年 +21.47 3.66 3.10 3.93 90
P5 2015〜2026 年 +13.61 2.97 2.95 2.93 86

注:元の記録は _ag_r5_fomc_next_20261101.log、日付の順の t と単純な t は _ag_r5_paper_order_fix_20261102.log。P2 と P3 は、元の台本(_ag_r5_fomc_next_20261101.py)が FOMC の日を日付の順に並べた辞書を回して値を並べていたため、元の記録の t と日付の順の t が一致する。

付記

再現の台本と記録:_ag_r5_fomc_next_20261101.py(予言の確かめ)、_ag_r5_fomc_next_trade_20261101.py(費用控除後)、_ag_r5_reason_fix_20261101.py(理由の分け直し)、_ag_r5_reason_fix_all63_20261101.py(63 銘柄)、_ag_argos_unified_20261102.py(ウォークフォワードと資産曲線)、_ag_argos_unified_rc_20261102.py(探索全体の偶然の確かめ)、_ag_r5_paper_series_20261102.py(回ごとの損益の再計算と図)。各台本の出力は、同じ名前の .log と .json に記録されている。

本稿は、ブログ「FX口座の選び方ノート」の記事(https://imadokoiku.com/fx/articles/2026-11-02_sk-fx-fomcnext01.html)と、論文の組版(https://imadokoiku.com/fx/research/2026-11-02_sk-fx-fomcnext01.html)に同じ文で掲載されている。本稿は投資の勧誘を目的とした物ではない。

本稿は生成 AI で下書きし、数値と引用を原典で確かめてから公開している。使用したモデルは Claude(Anthropic)である。

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