マウスピース矯正の医療費控除の必要書類と、対象になる矯正・ならない矯正の線引き

2026-10-20 更新
この記事の要点
- マウスピース矯正の費用で医療費控除を受けるときの必要書類は、確定申告書に添付する「医療費控除の明細書」です。領収書は添付せず、確定申告期限等から5年間、自宅等で保存します(国税庁 No.1119)。
- 医療費控除の対象になるかどうかは、国税庁の説明では、矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などから判断されます。容ぼうを美化するための費用は対象になりません(国税庁 No.1128・質疑応答事例「歯列を矯正するための費用」)。
- 控除額の上限は200万円です。例として1年に80万円を払い、式の(1)の金額が0円の場合、控除額は70万円です。税率10%なら、所得税が減る額の目安は7万円です(No.1120・No.2260。復興特別所得税と住民税は含みません)。
この記事の目次(7)
- 結論: 添付するのは明細書、領収書は5年保存
- 医療費控除の仕組みと「対象になる矯正」の線引き
- データで見る還付申告の人数(札幌国税局管内)
- 国税庁の原文で分かること(ローン・年をまたぐ支払い・通院費)
- 整理の表: 必要書類の一覧と戻る額の目安
- よくある質問
- 出典
費用と申し込みの流れをまとめた記事: 費用と申し込みの流れをまとめた記事
結論: 添付するのは明細書、領収書は5年保存
確定申告書に添付するのは「医療費控除の明細書」です。明細書は、医療費の領収書を見ながら必要なことを書き込む書類です(国税庁 No.1119)。領収書は確定申告書に添付しませんが、確定申告期限等から5年間保存し、税務署から提出や提示を求められることがあります(国税庁 No.1119 注1)。
矯正の費用が対象になるかどうかは、年齢や目的などから判断されます。容ぼうを美化するための費用は対象外です(国税庁 No.1128)。控除額は「(実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額」で計算し、(2)の金額はふつう10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)で、上限は200万円です(国税庁 No.1120)。
医療費控除の仕組みと「対象になる矯正」の線引き
医療費控除は、1年に払った医療費が一定の額を超えたとき、超えた分を所得から差し引ける仕組みです。所得から差し引く額が増えると、所得税が減ります(減る額の目安は、差し引く額×税率です。国税庁 No.2260)。計算の式は、国税庁 No.1120 にあります。
式で差し引く「(2)の金額」は、10万円です(国税庁 No.1120)。ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5パーセントの額を差し引きます(同)。総所得金額等は、給与などの1年の所得を合計した額のことです。
国税庁 No.1128 は、子どもの成長を妨げないための不正咬合の矯正を例に挙げています。そのうえで、年齢や目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は対象になる、と説明しています。
一方で、同じページには「同じ歯列矯正でも、容ぼうを美化するための費用は、医療費控除の対象になりません。」とあります(国税庁 No.1128)。質疑応答事例には「将来の就職や結婚を考慮しての歯列矯正は、一般的に容姿を美化し又は容貌を変えるためのものであると認められ、この場合の費用は、医療費控除の対象とはなりません。」とあります(国税庁 質疑応答事例「歯列を矯正するための費用」)。この事例は、根拠の法令として所得税法施行令第207条と所得税基本通達73-4を挙げています。
マウスピース矯正だから対象になる、ならない、という書き方は国税庁の原文にありません。判断に使われるのは、年齢や矯正の目的などです(国税庁 No.1128)。
データで見る還付申告の人数(札幌国税局管内)
還付申告は、納めすぎた所得税を返してもらうための申告です。国税庁 No.2030 は、医療費控除を還付申告の例に挙げています。札幌国税局の発表で、管内の人数の推移を見ることができます。
還付申告の人数(札幌国税局管内)
令和7年分の還付申告は461,979人で、前年から2.8%減りました(札幌国税局『令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について』参考資料 表1)。同じ年の管内の確定申告人員は828,243人です(同 参考資料 表3-1)。割合を計算すると、461,979 ÷ 828,243 で約55.8%になります。
この数字の限界も書いておきます。札幌国税局の管内だけの数字で、全国の数字ではありません。また、還付申告全体の人数なので、医療費控除を使った人の数ではありません。
令和4年分から令和7年分は、「翌年3月末日までに提出された申告書の計数」です(同 参考資料 表1の注)。それより後に出された申告書は、この数字に入っていません。
国税庁の原文で分かること(ローン・年をまたぐ支払い・通院費)
歯科ローンで払った場合について、国税庁 No.1128 は次のように書いています。「信販会社が立替払をした金額は、その患者のその立替払をした年(歯科ローン契約が成立した時)の医療費控除の対象になります。」。信販会社は、代金を立て替えて払い、後から分割で返してもらう会社です。
この場合に保存する書類は、「歯科ローンの契約書や信販会社の領収書」です(国税庁 No.1128)。また、「歯科ローンに係る金利および手数料相当分は医療費控除の対象になりません。」とあります(同)。
治療の途中で年が変わったときは、「それぞれの年に支払った医療費の額が、各年分の医療費控除の対象となります。」(国税庁 No.1128)。毎年、その年に払った額で計算し直すことになります。
通院費については、「診察券などで通院した日を確認できるようにしておくとともに金額も記録しておくようにしてください。」とあります(国税庁 No.1128)。
整理の表: 必要書類の一覧と戻る額の目安
ここでは、国税庁の原文(No.1119・No.1128)だけを使って、書類を「添付する物」と「保存する物」に分けました。さらに、No.1120 の式と No.2260 の税率を使って、戻る額の目安を計算しました。
必要書類の一覧
| 分け方 |
書類 |
出典 |
| 確定申告書に添付する |
医療費控除の明細書 |
No.1119 |
| 自宅等で保存する(確定申告期限等から5年間) |
医療費の領収書 |
No.1119 |
| 歯科ローンで払った場合に保存する |
歯科ローンの契約書、信販会社の領収書 |
No.1128 |
| 通院費を入れる場合に記録する |
通院した日(診察券など)と金額 |
No.1128 |
必要書類の確かめ方
戻る額の目安の計算(例)
この表の条件: 1年に矯正の費用を800,000円払った。式の(1)の金額は0円。総所得金額等が200万円以上(差し引く額は10万円)。所得が同じ税率の区分に収まる。
| 項目 |
式 |
金額 |
| 支払った医療費の合計額 |
— |
800,000円 |
| (1)の金額 |
— |
0円 |
| (2)の金額 |
— |
100,000円 |
| 控除額 |
800,000 − 0 − 100,000 |
700,000円(上限200万円の範囲内) |
| 所得税が減る額の目安(税率5%) |
700,000 × 5% |
35,000円 |
| 所得税が減る額の目安(税率10%) |
700,000 × 10% |
70,000円 |
| 所得税が減る額の目安(税率20%) |
700,000 × 20% |
140,000円 |
(式: 国税庁 No.1120。税率: 国税庁 No.2260 の速算表の5%・10%・20%の区分)
戻る額の目安(例)
No.2260 の速算表では、1,000円から1,949,000円までの区分が5%です。1,950,000円から3,299,000円までの区分は10%、3,300,000円から6,949,000円までの区分は20%です。控除によって所得が下の区分にまたがる場合は、この目安と合いません。
年をまたいで払った場合(例)
支払いが2年に分かれると、それぞれの年で10万円を差し引きます。そのため、合計の控除額は、同じ年に払った場合と変わります。
年をまたぐ支払いの例
この例は、どちらの年も総所得金額等が200万円以上で、(1)の金額が0円の場合の計算です(式: 国税庁 No.1120、年ごとの扱い: 国税庁 No.1128)。支払い方を決めるときは、控除だけでなく、契約の内容も含めて考える必要があります。
よくある質問
診断書は要りますか?
国税庁 No.1119 が示す添付書類は、医療費控除の明細書です。保存する物は、医療費の領収書です(国税庁 No.1119)。診断書の扱いが気になる場合は、申告の前に所轄の税務署に確かめてください。
大人の矯正でも対象になりますか?
国税庁の原文に「大人は対象外」とは書かれていません。対象になるかどうかは、矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などから判断されます(国税庁 No.1128)。容ぼうの美化や、将来の就職や結婚を考えての矯正は、対象になりません(国税庁 No.1128・質疑応答事例「歯列を矯正するための費用」)。
いくら戻りますか?
人によって違います。例として1年に80万円を払い、(1)の金額が0円の場合、控除額は70万円です(国税庁 No.1120)。税率10%なら、所得税が減る額の目安は7万円です(国税庁 No.2260)。この額には、復興特別所得税と住民税は含まれていません。
歯科ローンで払ったら、どの年の分になりますか?
信販会社が立て替えた金額は、歯科ローン契約が成立した年の医療費控除の対象になります(国税庁 No.1128)。歯科ローンの契約書と信販会社の領収書は保存しておきます(同)。金利と手数料に当たる分は対象になりません(同)。
出典
- 国税庁 タックスアンサー No.1128「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」(令和8年4月1日現在法令等・確認日 2026-10-20). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1128.htm
- 国税庁 質疑応答事例「歯列を矯正するための費用」(令和7年8月1日現在・確認日 2026-10-20). https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/08.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1119「医療費控除に関する手続について」(確認日 2026-10-20). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1119.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(確認日 2026-10-20). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」(確認日 2026-10-20). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 札幌国税局『令和7年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について』令和7年分(確認日 2026-10-20). https://www.nta.go.jp/about/organization/sapporo/release/r07/kakushin_jokyo/index.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.2030「還付申告」(確認日 2026-10-20). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2030.htm
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