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保育士の給料は安いのが当たり前か 私立保育所の保育士は2005年に女性平均を下回ったと論文で確認

保育士の給料は安いのが当たり前か 私立保育所の保育士は2005年に女性平均を下回ったと論文で確認
2026-10-20 公開・2026-10-21 更新

この記事の要点

  • 保育士の給料は安いのが当たり前か。私立保育所の保育士の給料は、昔から女性労働者の平均より低かったわけではありません。2000年すぎから下がり始め、2005年に女性労働者の平均を下回りました。今も「全産業の労働者の平均賃金を下回って」いると、広島市が国への要望書に書いています。
  • 東京都の調査では、今の園を辞めたい理由で最も多いのは「給料が安い」で、61.6%でした(n=2,399)。一方、実際に辞めた人の理由で最も多いのは「職場の人間関係」の31.5%で、「給料が安い」は22.1%でした。
  • 2005年に女性平均を下回ったのと同じ保育所の保育士では、都道府県別の集計データで見ると、2000年以降、平均勤続年数が延びても賃金が上がりにくくなっていました。著者は留保を要する結果としていますが、平均勤続年数が延びても賃金が伸びにくくなっていたことは、調べて分かった意外な点です。
  • 東京都の私立の保育士では、処遇改善のあとに時給が7%上がり、辞めたい人が5ポイント減りました。二つの変化には関係がありました。令和7年度からは、加算のうち区分2(賃金改善分)と区分3(質の向上分)の合計の1/2以上を、基本給か毎月の手当で払う決まりになっています。
この記事の目次(8)
  1. 結論:保育士の給料は今も低い。私立保育所では2000年すぎから下がった
  2. 「給料」の数字の読み方と、処遇改善等加算の仕組み
  3. データで見る全体の給料と、辞めたい人の割合・理由
  4. 研究で分かっていること:論文3本の結果と限界
  5. 辞めたい理由と辞めた理由の差、転職先を比べる前に確かめる点
  6. よくある質問
  7. 次に読む
  8. 出典

給料や休みの希望を、園に電話する前にアドバイザーへ伝える方法をまとめた記事: レバウェル保育士の求人相談と匿名スカウトを使う前に知っておく3つ

結論:保育士の給料は今も低い。私立保育所では2000年すぎから下がった

保育士の給料は、今も全産業の労働者の平均を下回っています。ただし、私立保育所の保育士の給料が下がり始めたのは2000年すぎです。2005年に女性労働者の平均を下回りました。

給料は、辞めたい理由の1位です(61.6%)。ところが、実際に辞めた人の理由では22.1%で、3番目でした。

東京都福祉保健局(現・福祉局)『令和4年度 東京都保育士実態調査 結果の概要』の切り抜き。61.6の所を赤い枠で囲んでいます。
出典: 東京都福祉保健局(現・福祉局)『令和4年度 東京都保育士実態調査 結果の概要』(2026-10-21 撮影)

処遇改善のあとに賃金が上がり、辞めたい人が減ったことには関係がありました。一方で、給料を上げると離職が減るかどうかは、研究によって結論が分かれています。

「給料」の数字の読み方と、処遇改善等加算の仕組み

保育士とはどんな人か

保育士は、児童福祉法で決められた名前の資格です。法律では「保育士登録」を受けて、「児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者」と書かれています。

統計の「賃金」は所定内給与額のこと

国の賃金の統計(賃金構造基本統計調査)の「賃金」は、令和7年6月分の所定内給与額の平均です。所定内給与額は、残業代などを除いた、毎月決まって払われる給与のことです。

結果の概況の数字は、10人以上の常用労働者を雇う民営の事業所だけを集計しています。そのため、公立保育所で働く保育士の給料は概況の数字に入っていません。

処遇改善等加算は令和7年度に一本化された

処遇改善等加算は、職員の給料を上げるために、園の運営のお金に上乗せして払われるお金です。これまでは加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲに分かれていました。令和7年度から一つの「処遇改善等加算」にまとめられました。

まとめたときに変わった決まりのうち、給料の配分の決まりは次の二つです(賃金改善の確かめ方なども見直されました)。

  • 「区分2(賃金改善分)」と「区分3(質の向上分)」の合計の1/2以上を、基本給か、決まって毎月払う手当で払う。
  • 月額4万円を受け取る副主任保育士等を1人以上置くという要件がなくなった。

(川崎市の資料)

データで見る全体の給料と、辞めたい人の割合・理由

一般労働者(短時間労働者を除く)の所定内給与額

令和7年の所定内給与額は、男女計で340.6千円、男性で373.4千円、女性で285.9千円でした。この数字は、令和7年6月分の、民営の事業所の数字です。

令和7年6月分の一般労働者(短時間労働者を除く)の所定内給与額は、男女計で340.6千円、女性で285.9千円でした。
一般労働者(短時間除く)の所定内給与額

保育士を辞めることを考えている人は21.3%

東京都の調査では、保育士として働いている人の21.3%が、保育士を辞めることを考えていました(n=11,277、東京都福祉保健局『東京都保育士実態調査』令和4年度)。内訳は、「保育士以外の職種で働きたい」が19.4%、「働かないつもりだ」が1.9%でした。

今の園を辞めたい理由(複数回答)で最も多いのは「給料が安い」の61.6%でした。次が「仕事量が多い」の54.0%、「労働時間が長い」の35.4%、「職場の人間関係」の30.1%でした。

実際に保育士を辞めた人の理由では、「職場の人間関係」が31.5%で最も多くなっています。次は「仕事量が多い」の23.1%、「給料が安い」の22.1%、「健康上の理由(体力含む)」の20.6%でした。

東京都の調査で、給料が安いは辞めたい理由で61.6%、辞めた理由で22.1%、人間関係は30.1%と31.5%でした。
辞めたい理由と辞めた理由

保育士の有効求人倍率

有効求人倍率は、「月間有効求人数」を「月間有効求職者数」で割った数字で、仕事を探している人1人あたりの求人の数にあたります。保育士の有効求人倍率は、令和7年1月に全国で3.78倍、東京都で4.81倍でした。広島県では、令和8年1月に8.19倍でした。

広島市は同じ要望書で、保育士を集めにくい理由として、賃金が低いことや、配置が十分でなく労働環境が厳しいことを挙げています。

研究で分かっていること:論文3本の結果と限界

小林(2019年):給料が下がったのは2000年すぎから

小林(2019年)は、私立保育所の保育士の賃金を、1980〜2015年の都道府県別の集計データを使って調べました。その結果、給料は「2000年すぎから低下し,2005年にはいずれの人口規模においても女性労働者の平均を下まわるレベル」になっていました。

都道府県別の集計データでは、2000年以降は、平均勤続年数が延びても賃金が上がりにくくなっていました(著者は留保を要する結果としています)。また、主に人口密度の低い地方で、公立の園の割合が減るのと一緒に賃金が下がっていました。どちらも関係があったという結果です。

一人ひとりのデータではなく集計データを使った分析で、著者自身も「留保を要する」と書いています。対象は私立だけで、2015年までのデータです。

朝井・地曵(2021年):処遇改善のあと、時給が上がり辞めたい人が減った

朝井・地曵(2021年)は、東京都の調査の2013年と2018年の結果を比べ、私立の園の保育士と公立の園の保育士の変化の違いを調べました。対象は、20〜59歳の正規職員でフルタイムの保育士です。処遇改善のあと、私立の園の保育士の時給は7%上がっていました。

辞めたいと答えた人の割合は、処遇改善の前の平均26%から5ポイント下がりました(元の値から見ると約19%の減少です)。辞めたいと考える保育士の90%では、留保賃金が市場賃金を上回っていました。留保賃金は、その仕事を続けてもよいと思える最低限の賃金のことです。

比べたのは東京都の2時点だけで、2018年の回答率は35.7%でした。結果は辞めたいという「意向」で、実際に辞めたかどうかは見ていません。ランダム化の試験でもありません。

前浦(2023年):給料で離職が減るかは結論が分かれている

前浦(2023年)は、看護師・介護職員・保育士・幼稚園教諭の離職について、これまでの研究を集めて整理しました。保育士の離職率は、2014年から下がる傾向にありました。

賃金で離職が減るかについては、「効果を認める研究もあれば、その効果を認めない研究も存在する」と書かれています。さらに、賃上げを続ければ給料を理由とする離職は減るかもしれないが、「「賃金」以外の要因による離職は残る可能性がある」としています。

この報告は査読のある誌に載ったものではなく、執筆者個人の責任で発表されたものです。新しいデータを分析した研究ではなく、保育士の処遇改善の効果を直接はかった研究でもありません。

小林、朝井・地曵、前浦の3本の論文について、研究の種類、対象、結果、限界を並べた表です。
論文3本の結果と限界

朝井・地曵(2021年)では、給料が上がったことと、辞めたい人が減ったことに関係がありました。前浦(2023年)のまとめでは、賃金で離職が減るかの結論は分かれています。どちらも、今ある研究から言える範囲の結果です。

辞めたい理由と辞めた理由の差、転職先を比べる前に確かめる点

表A:辞めたい理由と辞めた理由の差を計算した表

表の条件: 東京都の調査(令和4年度)・複数回答。「辞めたい理由」は今の園を辞めたいと考えている人(n=2,399)の答え、「辞めた理由」は保育士を辞めた人の答えです。

理由 辞めたい理由 辞めた理由 差(辞めた − 辞めたい)
給料が安い 61.6% 22.1% 22.1 − 61.6 = −39.5ポイント
仕事量が多い 54.0% 23.1% 23.1 − 54.0 = −30.9ポイント
職場の人間関係 30.1% 31.5% 31.5 − 30.1 = +1.4ポイント

(数字は東京都福祉保健局『東京都保育士実態調査』令和4年度。差は記事で計算しました)

辞めたいと考えている人と、もう辞めた人は別の人たちです。同じ人の気持ちが変わったことを表す数字ではありません。東京都だけの調査なので、ほかの地域にそのまま当てはまるとは限りません。

この表から分かるのは、給料は「辞めたい」と思う理由として多く挙がる一方で、実際に辞めた理由では人間関係が給料と同じくらいか、それより多く挙がっているということです。転職先を比べるときは、給料に加えて、仕事量と人間関係の情報も集める材料になります。

表B:求人票や面接で確かめる点

確かめる点 見るところ 根拠
給料の内訳 基本給、毎月決まって払われる手当、それ以外の支給を分けて見る 処遇改善等加算の決まり(川崎市の資料)
加算の払い方 区分2と区分3の合計の1/2以上が、基本給か毎月の手当で払われているか 同上
役職の手当 月額4万円の副主任保育士等を置く要件はなくなったため、役職の手当は求人票の額で見る 同上
転職エージェント(有料職業紹介事業者)の費用 求職者が手数料を求められないか 職業安定法 第三十二条の三 第2項
給料以外の条件 仕事量、職場の人間関係 表A(東京都福祉保健局、令和4年度)
給料の内訳、加算の払い方、転職エージェントの手数料、仕事量と人間関係の4つを確かめるチェックリストです。
転職先を比べる前の確認

よくある質問

保育士の給料の平均は、どの表で確かめればよいですか

厚生労働省の賃金構造基本統計調査の、令和7年の一般労働者・職種別の表1「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」に、職種ごとの数字が載っています。比べる相手として、一般労働者(短時間労働者を除く)の所定内給与額は、男女計で340.6千円、女性で285.9千円でした。

給料を理由に辞めたい人はどれくらいいますか

東京都の調査では、保育士を辞めることを考えている人は21.3%でした。今の園を辞めたい人の理由では、「給料が安い」が61.6%で最も多くなっています。

保育士以外の仕事に移りたい人はどれくらいいますか

東京都の調査では、「今後は保育士を辞め、保育士以外の職種で働きたい」と答えた人が19.4%でした。どちらが向いているかは、表Aと表Bの点を自分の条件で見て決めることになります。

保育士の転職エージェント(有料職業紹介事業者)は、求職者にお金がかかりますか

職業安定法では、「有料職業紹介事業者は、前項の規定にかかわらず、求職者からは手数料を徴収してはならない」と決められています。ただし、「当該求職者の利益のために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるとき」は、決められた場合に限って手数料を取ることができます。

処遇改善の加算がどう払われているかは、何を基準に見ればよいですか

令和7年度からは、区分2と区分3の合計の1/2以上を、基本給か決まって毎月払う手当で払う決まりです。求人票の給料の内訳を見るときは、この決まりを基準にできます。

次に読む

このサイトで次に調べる候補: 保育士 給料 平均(保育士の給料の平均を、国の職種別の表で確かめたい人向け)

出典

この記事の数字と事実の出どころは、下の一覧にまとめています。

  1. 小林佳美(2019)「私立保育所保育士の賃金水準の低下と影響要因 ― 1980 年以降の都道府県別時系列集計データによる実証分析―」保育学研究 57巻2号. https://doi.org/10.20617/reccej.57.2_6
  2. 朝井友紀子・地曵暁瑛(2021)「保育士の処遇改善と労働供給」経済分析 第202号. https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/archive/bun/bun202/bun202g.pdf
  3. 前浦穂高(2023)「看護師、介護職員、保育士、幼稚園教諭を対象とした処遇改善事業の有効性の検討に向けて―先行研究レビューを手がかりとして」JILPT ディスカッションペーパー 23-04. https://www.jil.go.jp/institute/discussion/2023/23-04.html
  4. 厚生労働省『令和7(2025)年賃金構造基本統計調査の概況』. https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/dl/14.pdf
  5. 厚生労働省『賃金構造基本統計調査 令和7年 一般労働者 職種 表番号1』2026年. https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040421116
  6. 東京都福祉保健局(現・福祉局)『令和4年度 東京都保育士実態調査 結果の概要』2023年. https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/0r4houkokusyogaiyou
  7. 広島市『令和8年度主要事業に関する要望(国への要望)』2025年7月. https://www.city.hiroshima.lg.jp/res/projects/default_project/_page/001/042/265/kuni20250730-11.pdf
  8. 広島市『令和9年度主要事業に関する要望(国への要望)』令和8年7月. https://www.city.hiroshima.lg.jp/res/projects/default_project/_page/001/052/097/kuni2026-11.pdf
  9. 児童福祉法 第十八条の四. https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=322AC0000000164;article=18_4
  10. 職業安定法 第三十二条の三. https://laws.e-gov.go.jp/api/1/articles;lawId=322AC0000000141;article=32_3
  11. 川崎市「処遇改善等加算の一本化について」(令和7年度の見直し。こども家庭庁成育局保育政策課「処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について」からの引用). https://www.city.kawasaki.jp/450/cmsfiles/contents/0000182/182735/siryo7-3.pdf
  12. 厚生労働省「職業安定業務統計 用語の解説」. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1_yougo.html

この記事は、AI で下書きし、公式の資料と論文で確かめてから公開しています。

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